(リリース)医療ビッグデータ活用により機械学習の優位性を解明

特定健診結果から糖尿病発症確率の高精度予測を可能にする機械学習技術

研究成果のポイント

概要

 大阪大学大学院人間科学研究科の大学院生の瀬戸ひろえさん(博士後期課程)、キャンパスライフ健康支援・相談センターの土岐博特任教授らの研究グループは、機械学習が非常に高い精度で糖尿病の発症確率予測に使えることを世界で初めて明らかにしました。

 このことにより、特定健診のビッグデータを使って、生活習慣病などの発症確率を高精度で予測するAIモデルを作成することが可能になりました。病気の発症前に個人が発症確率を知ることにより、個人の努力で病気発症を抑制する生活習慣改善の動機とすることができます。これまで糖尿病の発症確率予測においては、古典的な統計モデルと機械学習によるAIモデルでは同等の精度しか出せないと考えられており、機械学習の有用性については解明されていませんでした。

 今回、土岐特任教授らの研究グループは、大阪府国保連合会保有の国民健康保険被保険者の健診結果データ(年間で約60万人分のビッグデータ)を活用することにより、糖尿病発症予測において1万をこえるビッグデータでの機械学習の優位性を定量化し、機械学習が健康予測に高精度で適用できることを解明しました。これにより、糖尿病のような生活習慣病の発症確率予測を高い精度で行うことが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、10月11日(火)18時(日本時間)に公開されます。

詳細については、以下のページをご参照ください。

ResOU
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2022/20221011_1

本学のサイト
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/public-relations/press_release/22/jumajn


(リリース)抗肥満因子の血中濃度は生活習慣により変化することが明らかに

朝食抜き、毎日飲酒、喫煙などの生活習慣に要注意

研究成果のポイント

概要

 大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの中西香織講師、瀧原圭子教授らの研究グループは、「朝食をあまり食べない」、「毎日飲酒する」、「喫煙習慣がある」などの生活習慣が抗肥満作用をもつ因子
として知られている線維芽細胞増殖因子(FGF)21 の血中濃度を変化させることを発見しました。

 これまでFGF21 は、肥満・加齢などで血中濃度が上昇することは知られていましたが、生活習慣との関連については解明されていませんでした。

 今回の研究では、血清FGF21 値と生活習慣の関連を調査し、朝食の摂取頻度、飲酒頻度、喫煙習慣などの生活習慣が血清FGF21 値を変化させることを明らかにしました。

 本研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」に、11 月19 日(金)に公開されました。

詳細については、こちらのPDFファイルをご参照ください。

【用語解説】
*1 線維芽細胞増殖因子(FGF)21
FGF21 はFGF19 やFGF23 と共にホルモン様の作用を持つFGF19 サブファミリーに属しています。FGF21 は糖脂質代謝を改善するなどの抗肥満症効果を持つことから、2 型糖尿病やアルコー
ル性脂肪肝炎(NASH)などの肥満関連疾患の新しい治療戦略として期待されています。

(リリース)生活習慣病の発症確率を予測する AI を開発~府民向けアプリ「アスマイル」~

大阪府の健診等ビッグデータを活用

健康づくりを応援する府民向けアプリ「アスマイル」に 搭載

研究成果のポイント

概要

大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの土岐博特任教授・山本陵平准教授らの研究グループは、大阪府域の市町村国民健康保険被保険者の健診等ビッグデータ*2 を活用して、機械学習*3(AI)を行い、国保被保険者に対する 3 疾病の発症確率の予測モデルを構築しました。これまでは大規模な健診データ等が入手できないことで、精度・信頼性の高いAIを作成することはできず、都道府県レベルでの本格的な社会実装は難しい状態でした。3大生活習慣病である糖尿病・脂質異常症・高血圧は心筋梗塞や腎臓病などの重篤な病気の引き金になるので、これらの疾病の発症確率を事前に把握することで、個々の努力により発症を抑制することが可能です。生活習慣病は個人の日常生活が直接反映されるので、発症確率を知ることで日常生活を改善し、健康状態を保つことが期待できます。

詳細については、こちらのPDFファイルをご参照ください。

【用語解説】

*1 アスマイル
大阪府が開発したスマートフォンのアプリでは毎日の歩数や体重、血圧などが記録されます。国保加入者は健診結果も自動的に記録されます。毎日掲載される健康に関する記事も健康に対する留意点を教えてくれます。大阪府民に寄り添って、府民一人一人が自律的に健康を推進することを目的としたアプリです。

*2 健診等ビッグデータ
日本では 40 歳から74歳までの国民は特定健診を受診するように推奨されています。大阪府では大阪府国保連合会に国保被保険者の健診データやレセプトなどが集められており、個人情報が削除
されたビッグデータは病気発症の基礎データとなるし、その後どのように大きな病気にまで発展するかを知ることができます。

*3 機械学習
コンピュータが日常になった現在では、健診データなどが電子化されてビッグデータが蓄積されます。このようなビッグデータから意味のある情報を引き出す技術を機械学習と呼び、最近ではいく
つもの有能な機械学習の方法が開発されています。

(リリース)「野菜は好きですか?」でわかる腎臓病のリスク

大阪大学職員10,819人の職員健診データの解析結果

大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学の大学院生の尾崎晋吾さん(博士課程)とキャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平准教授らの研究グループは、大阪大学の職員健診データを用いて、「野菜は好きですか」という質問に「嫌う」と回答した職員は蛋白尿のリスクが高いことを明らかにしました。

研究成果のポイント

詳細については、阪大公式サイト(プレスリリース)に掲載しています。

(リリース)健診や医療機関で腎臓の検査を受けていない 高齢男性は透析のリスクが高いことが明らかに

大阪府寝屋川市の69,147人を5年間追跡した疫学研究

大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの芦村龍一特任助教と山本陵平准教授らの研究グループは、大阪府寝屋川市と共同で、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない高齢男性は、透析のリスクが高いことを明らかにしました。

これまで、健診を受けていないことは死亡のリスクであることが報告されていますが、透析治療が必要な末期腎不全に及ぼす影響は不明でした。

本研究グループは、寝屋川市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者69,147人を5年間追跡した結果、過去1年間に健診を受けた人と比較して、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない人は、透析に至るリスクが高く(男性1.66倍、女性1.51倍)、特に75歳以上の高齢男性では、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない人の透析のリスクは2.72倍に上昇していることが明らかになりました。これにより、末期腎不全を予防する上で、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない高齢男性は、健診の受診勧奨の重点対象候補となることが期待されます。

本研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」に、10月26日(火)18時(日本時間)に公開されました。

詳細については、阪大公式サイト(プレスリリース)に掲載しています。